もしもキツキンガルがあったら?


キュピル
「輝月って何考えているのか時々分からないな。」
ファン
「ではキツキンガルでも作ってみましょう。」
キュピル
「ごめん、言っている意味が分からない。」




・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・。


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==ジェスターのクエストショップ


輝月
「キュピル!キュピルはどこじゃ!!」

クエストショップのメンバーたちが寝泊りしている部屋へ続く廊下から勢いよく輝月が飛び出てきた。
声こそ荒げているが、別段怒っている雰囲気はない。
元より、輝月が大声を上げて誰かを呼びつけることは別段特別なことではないため誰も気には留めていない。
とはいえ、その事情を知らない依頼者が万が一クエストショップに来ていた場合は驚かれることは確実なため仕方なくキュピルが立ち上がり輝月に注意する。

キュピル
「ここにいる。いつも大声は上げないようにって言っているじゃないか。」
輝月
「ふっ、私にお願いするとは良い身分じゃな?」
キュピル
「すっごい事言われている。

・・・それで、一体どうしたんだ?」
輝月
「お主、私との約束を忘れてはおらぬか?」

キュピルが目線を上に逸らし、腕を組んで何かあったか思い出そうとする。
しかしいくら考えども何か約束した記憶は出てこない。

キュピル
「・・・ごめん、なんだったか。」
輝月
「・・・なら良い。」

そういうと輝月は背を向け出てきた扉をもう一度潜り自分の部屋に戻っていった。

キュピル
「一体なんだったんだ・・・?うぅーむむむ・・・輝月が何を考えているのかまったく分からない・・・・!」
ファン
「そういう時にキツキンガルを使うんですよ、キュピルさん。」
キュピル
「うお!?ファン!?何時の間に!?」
ファン
「初めから隣にいましたよ。文章には出ていなかっただけで。」
キュピル
「小説ならではのメタ発言するな。

・・・それで、改めて聞くけどキツキンガルって何だ?」
ファン
「キュピルさん、バウリンガルって知っていますか?」
キュピル
「バウリンガル?・・・知らないなぁ・・・。」
キュー
「アタシは知ってるぜーーーー!!!!」

突然キューがキュピルの家へ続く扉から飛び出てキュピルに飛びかかった。
キュピルが慣れた動作で飛び掛ってきたキューを軽くいなし攻撃を回避する。

キュー
「おーおー、実の娘を無視するなんて酷い父親だぜ。」
キュピル
「いいから、それでバウリンガルって何だ?」
キュー
「しょうがないなぁ~。バウリンガルってのは犬の鳴き声から今何を思っているのか教えてくれる機械のことだぜ!!たとえばワン!って鳴けばお腹減った!って事なんだぜ。ワン!!」
キュピル
「朝食ならルイが作っていたと思うぞ。」

キューが回れ右してクエストショップへ戻っていく。
何事もなかったかのように再びキュピルとファンが向き合う。

キュピル
「・・・名前が似ているな、バウリンガルとキツキンガル。・・・もしや。」
ファン
「察しましたか?輝月さんの前でこのキツキンガルを翳せば(かざせば)輝月さんが内心何を思っているのか偽りなく教えてくれます。」
キュピル
「そいつは凄いな・・・。ってか、いつこんなの作ったんだ?」
ファン
「これはもしもシリーズですよ、キュピルさん。」
キュピル
「その先は言ってはいけない。

ありがとう、ちょっとこいつをさっそく使って輝月が何を思っているのか見てくるよ。」
ファン
「行ってらっしゃいです。」



・・・・・。


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クエストショップのメンバー達が住む部屋へ続く廊下へやってきたキュピル。
扉の前に達筆で輝月と書かれたプレートがかけられてある前に立ち、三回ほどノックする。

キュピル
「輝月?いるか?」

しばらくして、輝月が無言で扉を開けた。

輝月
「何じゃ?約束でも思い出したか?」

すかさずキツキンガルを目の前に出し、モニターに何が映し出されているのか確認する。

『どうしてキュピルが私の部屋に?』

キュピル
「(・・・?言っていることと考えていることが何か・・・違うな。)」

てっきり怒っていたり、思い出したかどうか気になるコメントが出てくると思っていたが・・・・。

キュピル
「いや、まだ思い出していないんだ。」
輝月
「相変わらず無礼なやつじゃな。」

もう一度キツキンガルをチェックするキュピル。

『さて、どうするかのぉ。』

キュピル
「(この後何を要求するのか考えているのか?)」
輝月
「さっきから何をチラチラ見ておるのじゃ?」
キュピル
「あ、こいつはただ仕事で使う端末だ。気にしないでくれ。」

その後心の中で「嘘だけど・・・・」っと呟くキュピル。
輝月が不思議そうにこっちを見ているがやり過ごそう。

キュピル
「それより約束の話なんだけど・・・悪い、本当に覚えていないんだ。何を俺は約束した?」
輝月
「お主と一対一で今日稽古をつけると約束したではないか。」
キュピル
「本当に!?うわっ、まじか・・・。全然覚えていない・・・。」

一度キリギンガルに目を落とすキュピル。

『嘘じゃがな。』

キュピル
「え?嘘?」
輝月
「っ!」

『一瞬で見抜かれたと言うのかっ!?』

キュピル
「(おいおい、嘘なのか?・・・キツキンガルあっても輝月が何考えているのか全然分からないぞ・・・。)」

輝月
「その・・・あれじゃ・・・・。」

『どうしたものか・・・。出来ればキュピルと話す機会を手にしたいのだが・・・・。』

キュピル
「(話す機会・・・?)」

輝月
「・・・ちょっとだけ待ってくれぬか?」
キュピル
「別にいいが・・・。」

『うぅ・・・私は思っていたより弱い奴じゃな・・・。頭の中ではしっかり予測立てていたのに、いざ本番では全く上手く言っておらぬじゃないかっ・・・。』

キュピル
「・・・もしかして輝月。」
輝月
「な、何じゃ?」
キュピル
「俺と何か話がしたいがために嘘をついたか?」

輝月が一度目を瞑り、ため息をつく。

輝月
「お主には勝てぬな。正直に申そう。さっきの話はすべて嘘じゃ。」
キュピル
「一体どうしてこんな事を?」
輝月
「お主を困らせようと思ってな。」

『口が裂けてもお主と話がしかたっとは言えぬな。』

キュピル
「(・・・なるほど、ようやく分かった。・・・輝月にしてはかなり頑張った方か・・・。)
輝月。」
輝月
「な、なんじゃ?」
キュピル
「プライドとかあるのかもしれないけど、適当に雑談でもしたいのであれば普通に雑談でもしようって言ってくれればいつでも応じるよ。
輝月が上の立場でありたいのであれば俺はそれでいい。勿論雑談の中でって事だけど。」

輝月がしばらく目をぱちくりさせた後、ふっと少しだけ笑みを見せる。

輝月
「ふっ、お主は本当に琶月と違って物分りが良いな。それでこそ、ワシの従者に相応しい。」
キュピル
「いや、従者レベルまで下げられるのは正直ちょっと困る。」


『本当にキュピルが私の従者になってくれれば、これ以上に嬉しい事はないのだがな・・・。』

キュピル
「(・・・・輝月、俺のこと凄い気に入っているな。)
とりあえず、向こうで会話でもしようか。立ち話は疲れるしね。」
輝月
「うむ。」
琶月
「はい、はーーーーい!!!私も会話に混ぜてくださーーーーーい!!!」
キュピル
「(五月蝿いの来たな・・・。)」
輝月
「(琶月め!!後でしばいてやる!!)」
琶月
「ああああああああああああああああ!!!!何で五月蝿いだとかシバクだとか思っているんですかっーー!!やだーーーー!!!」
キュピル
「(人の気持ちだけ敏感に読み取れるな、琶月は・・・・。)」




もうちょっとだけ続く


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